「緩和ケアって脇役でしょ?」
「がん化学療法を極めたい!」
薬剤師になりたてピチピチの
私の興味の的はがん化学療法でした。
興味を持ったきっかけは、
祖父の死の影響が強いでしょう。
祖父はがんで亡くなりました。
当時、私は地元を離れ県外の大学に通っており、
地元を離れたことで家族の温かさが
身に染みていた矢先の出来事でした。
祖父の死が身近な家族との初めての別れであり、
病気発覚から他界まであっという間だった事もあり、
かなりの衝撃を受けたことを覚えています。
その経験から、がん治療に興味をもち、
がんから誰かの命を救いたいと
思うようになりました。
緩和ケアとの出会い
「がん化学療法を極めるんだ」
と思いを胸に病院へ入職。
1年間はみっちり調剤業務を叩き込まれました。
そんなこんなで仕事に少し慣れてきた頃、
緩和ケアチームへ配属されることになりました。
「緩和ケア?治す医療じゃないよね。。。」
がん化学療法を極めたかった私にとって
緩和ケアは補助的な位置付けであり、
当初そこまで乗り気ではありませんでした。
「知らない分野だし、一応いい経験にはなるかな」
程度です。
ちょうどそれと同時期に、
耳鼻咽喉科・頭頸部外科病棟を任されました。
この病棟配属が大きな転機となります。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科では
頭頸部がんの治療が行われていました。
治療は化学療法と放射線治療の併用が基本です。
多くの患者さんが治療の副作用により
喉の皮膚や口腔内・食道粘膜に炎症が起き、
痛みが生じ、食事を摂ることが困難となる
とても過酷な治療です。
そういった患者さんと接しているうちに、
この辛さを何とか取り除けないものかと
思うようになりました。
一方で、緩和ケアチームは
そういった辛さを取り除くために尽力していました。
始まり
「辛い症状に苦しむ患者さん」
「辛さを取り除く緩和ケアチーム」
この2つを目の当たりにし、
私の中にある思いが芽生えます。
苦痛がとれるってすごいことなのでは!?。
たとえ病気が治らなかったとしても、
苦痛が取れれば、病気がないかのように
振る舞うことだってできる。
がん治療は確かに大事な分野です。
ただ、ヒトは必ず死ぬ。
どんなに良い治療法が開発されたとしても、
いつか治療を終了しなければならない時は来る。
病気が消えなかった時に願うことはなにか、、、
とにかく苦痛をとってほしい。
その願いを叶えることができる医療こそ緩和ケア。
緩和ケアは今後発展すべき重要な分野だ。
「よし!私は緩和ケアを極める!」
こうして私の緩和ケアへの道が始まったのです。
最後に
時間が有限であることを気づかせてくれる緩和ケア
共に悪戦苦闘する医療スタッフの仲間たち
多くの学びを与えて下さる患者さん・関係者の皆さん
すべての出会いに感謝し、
今後もより良い緩和ケアの提供を目指して。。。
Hope for the best and prepare for the worst.